タイ種の糸で作られた黒檀染の絹布





長年の希望であったタイ種の糸で黒檀染の布を作りたいという願いが叶ったので、 それについてすこし触れたいと思います。
タイはものすごい勢いで経済発展しており、
それに伴い農家の意識も変化しています。タイ種の絹布は生産量が減っており価格が高騰し、
手に入れるのは毎年難しくなっています。今回黒檀染の絹布を作って頂いた場所は、
チェンマイから遠く離れた田舎にあり、分かりにくい場所にあるのも魅力です。

養蚕は餌である桑の葉の確保や、蚕が遺伝子的に弱かったりと色々問題もあるそうですが、
何十メートルの長さの生地を作り出すだけでも、相当の数の繭が必要ですし、
これはやはり値段が高くないと割が合わない仕事なのだと思いました。

また、繭を煮て生糸を取り出さなくてはいけないので、蚕の命を奪って
作られるのがシルクの布です。そう言う意味でも、絹糸の価格が高くなければ、
命を無駄にしてしまうような使い方も出来てしまいますし、
それはそれで良いのかなとも思います。

タイ産の蚕から作り出される生糸は、熱帯気候の影響なのか、繭糸は太く短い特徴があり、
繭糸を他の気候帯のものと比較しても表情が違うと思います。
中国から絹糸を仕入れてタイで織れば、それはタイシルクと呼べてしまいますが、
僕はタイ産の繭から作り出される生糸で作られた布を使ってもっと服を
作ってみたいと思っています。なぜならばタイ産のシルクは、マットな質感も魅力ですし
丈夫で長く着ることが出来る布だからです。
また、黒檀染めに関しても、タイ国内の黒檀の木の数自体が減少しているような気がします。
黒檀の実は1年に一度、10月頃に収穫されますが、毎年実が付くわけでもないそうです。
そして濃く染めるには、何度も染めなくてはいけない苦労もあります。
1回染めただけでは茶色ですが、5回染めれば焦げ茶色になり、10回繰り返すと
かなり黒に近い茶色になります。それ以上染めてもより濃い色は難しく、
それよりは、収穫してすぐに染めた実を使えば、より濃く染まるという話です。

以前にも黒檀染のシルクの布で服を作ったことがありましたが、後染めの布だったので、
折伏せ縫いで厚みのある場所など、縫製時に針が折れてしまい、革用の針を
使って縫ってもらった事がありました。しかし、今回の布は先染めで染めていますし、
よく水で洗っているためか、黒檀の実の繊維などが手に付着することもなく、
縫製に関しても普段使っている布用の針で縫うことが出来ました。

どうぞ、貴重な黒檀染の絹布を、身にまとってみてはいかがでしょう。
10年でも、20年でも着ていただける、丈夫なものです。
特別な日だけでなく、毎日着ていただきたいです。

生命に感謝。



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